書評

【お笑い】漫才過剰考察 髙比良くるま著 シンパパ薬剤師わたわた的解説 3選

今回は令和ロマンの髙比良くるま著の漫才過剰考察です

 本書はM1グランプリ連覇した令和ロマンのくるま氏が「お笑いとは何か」「M1とななにか」等を解説された本になります。著者のお笑いに対する情熱と言語化能力の高さに終始圧倒される内容になっています

 本書はお笑いファンから私の様な普段お笑いを見ないような人でも楽しめる内容になっています。気になった方は是非一読してみてください

関連する記事はこちらからどうぞ。今回もなるほどポイントを3つ紹介していきます。

なるほどポイント

  1. 冒頭はM1解体新書
  2. お笑い×地政学となる中盤
  3. 〆に粗品氏との対談←ほぼメイン

冒頭はM1解体新書

 私はあまりお笑いを見ないので今年のM1覇者は誰かとか追ってないし知らないです。そんな私でもわかるような解像度でM1の解説がされています。M1前にどうやってネタを仕上げていくのか、そのネタの効果測定をどうやっているのか。まさにトライアンドエラーでビジネスパーソンにも通じるものがありました

 著者のM1での戦い方を垣間見ていると「甲子園常連校の野球部」だなと思いました。強豪校の練習がハードなのは皆さんも想像つくかと思います。他の芸人さんもM1を制するためにネタを練り込んでいるはず。では著者がやっていたことはなんなのか?それは甲子園常連校もやっている「敵チームの分析」です

 投手は相手打者の苦手なコースを覚えて、打者は相手投手の配球を覚えます。例えば「この打者は内角高めの長打率高いが内角低めの空振り率が高い」「この投手は初球はストレートでカウントを稼いで2ストライクになるとフォークで決めにくる」のような感じです

 著者の分析を読んで自己の成長だけでなく上記の様な分析もされてるなと感じました。その分析の量と質が異常だなとも感じました。やはり成果を上げる人は運だけでなく「成功しやすい方向へ努力できる」のでしょう

 M1ファンの方は著者の濃密な「2018年のM1はこうだった!」という総評が見れて楽しいと思います。著者の説が全て正しいとは思いませんがお笑いのプロの分析は市党との分析に比べて面白いと思います

お笑い×地政学となる中盤

 M1の濃厚解説の後はまさかのお笑い地政学が始まりました。関西のお笑いはこう、関東はこう、北はこう、南はこうと傾向分析となりました。着眼点がプロ目線で楽しく見られましたね。それもお笑いライブの現地での手応え等が根拠となっているので説得力がある

 日本が終わったと思ったら次は世界と著者の目線はグローバルか。芸人のyoutube参入、ゴットタレント出演がもたらした影響など。コロナ禍からのお笑い変遷もわかるので興味深かったです

 芸人のゴットタレント出演、Netflix等の映像コンテンツ普及で日本の漫才が世界に受け入れられるのか?それにはどんな課題があるのか?こうしたグローバルな視点でも問題提起がされています

 個人的には日本の「ボケとツッコミの文化」を世界に浸透させるにはまだ時間がかかるかなと思っています。吹き替えにすれば日本語は難しいし、字幕にしても解説がないと何故そうなるかがわからないかもしれない

 まさかのお笑い地政学の話になるとは思わなかったのでまさに過剰考察だなと思いました。ワンピースの黒幕を考察するより突飛な考察だなとも感じました。ただ教科書の様な考察ではつまらないのもまた事実

〆に粗品氏との対談←ほぼメイン

 最後のおまけ程度に付いていたのがむしろメインだなと読んでいて感じました。もしかして著者の頭は「ぶっ飛んでいる」んじゃないか?という疑問を粗品氏が肯定してくれる。「くるまはお笑いの悪魔に魂売ってる!」なんてコメントはほとんどの読者をうなづかせたんじゃないだろうか

 芸人同士の「楽屋での本音」の様なこの対談はとても楽しく読んでられました。「ネタの作り方」「あのボケはどういう意味なのか?」などテレビでは語られない内容かなと思いました。著者のボケはどう生み出されているのか?興味ないですか?そんな方は是非本書を読んでみてください

 対談で「他で歌ネタが来たらどうするか」という議論が興味深かったです。粗品氏は「同じ歌ネタで潰せばいい」、著者は「M1が面白くなるよう他のネタで勝負する」のように両極端で面白い。この話でタイガーウッズ氏の話が頭をよぎりました

 プロゴルファーのウッズ氏は相手がパットを決めたら負けが確定して優勝を逃してしまうシーンでも「入れ!」と思うそうです。それは負けても良いというわけではなく、ここで決まれば大会のシーンとして見せ場になると考えたからだと思います

 いかがでしたでしょうか?私は著者の事はあまり知らなかったのでyoutubeで調べてみました。「120万のスーツを買った」という動画があったのでクリック。結果としてオープンザプライス!からのくだりで笑ってしまいました。文章の感じから相当破天荒なのかと思いましたが見た目は普通でしたね。話題性のある著者の本なので気になった方は是非読んでみてください。それでは。